第1章 これからの宗教の話をしよう②│木村未明の「かしもの・かりもの勉強中」

こんにちは木村未明です

前回は、世界の宗教観に触れて、〝信仰は特別なものではなく日常の中にある〟ことに気づいた話について書きました。今回は日本の宗教観についてお話したいと思います。

この記事を書いた人
木村 未明
天理教深川大教会

きむら みめい…勤務地、葛飾区。職業、宗教家。
1991年生まれの宗教6世。宗教の世界に身を置き、日々信仰しながら感じる喜怒哀楽の数々を書き綴る本連載。コンセプトは「しなければならない信仰から、したくなる信仰へ」
@kimura_mimei

目次

あなたの宗教はなんですか?

日本人に「あなたは何か信仰をしていますか?」と尋ねると、多くの場合、「いや、特に……。」と答えるか、「一応、実家は代々、仏教の〇〇宗です。」と述べることが多いと思います。

日本は世界でも珍しい「無宗教」の国なんです。

ですが、完全に宗教から疎遠というわけではありません。

大晦日にはお寺の除夜の鐘を聞いて一年を振り返り、お正月には神社に初詣をして新たな一年の始まりを祝います。子供の七五三の際には神社を訪れ、お盆には凄まじい渋滞の中、故郷へ帰り、ご先祖のお墓にお参りします。結婚は大安吉日を選んで、キリスト教の教会や神社で挙式を行うことが一般的で、お葬式は仏式が主流です。テレビの星座占いでその日の服の色を決めることもあり、クリスマスには恋人とデートを楽しむこともあります。また、癒しや趣味として古都のお寺を訪れる若い人も増えています。

海外の人からすると、「なぜ日本人はこんなに多様な宗教的要素を取り入れているのか⁉」と不思議に思うこともあるでしょう。

でも、これが日本の文化であり、宗教観の一部なんです。

なぜ日本では、神様に祈ることもあれば、仏像に礼拝することもあるような、さまざまな宗教文化が受け入れられているのでしょうか?すこし考えてみたいと思います。

神仏習合→神仏分離令

昔、日本では「神仏習合」という出来事がありました。簡単に言うと、神道と仏教の要素が組み合わさった信仰の形態です。神様や天皇も仏の教えを学んでもいいよねと考えられていたんです。さらに言えば、仏様の方が神様よりも偉い存在だとする考えも存在しました。

現在ではほとんど見られないですが、平安時代以降、一つの場所に神社と仏堂が共立する例(神宮寺)もあり、神社のほとんどが天台宗か真言宗に属していたんです。人々は神仏二元信仰を持ち、神仏に対して異なる祈りや供養を行うことが一般的でした。しかし、明治初期の神仏分離令により、神道と仏教は分離され、神仏習合の状態は終了します。

(非常に簡略化された説明なので、詳しい人ごめんなさい汗)

しかし、長い間にわたり、神道と仏教の価値観を同時に抱える日本人の宗教観は、今でも日本の文化の一部ですね。そのためか、日本はさまざまな宗教文化を寛容に受け入れる国なのかもしれません。(もちろん、これは考えられる理由の一部です。)

だって、人生の大きなイベントである結婚式でも、普段は全く信仰しない神様に誓いを立てるんですよ?笑

日本は宗教のデパート?!

「七福神」も興味深い例ですね。

日本では縁起物として有名な七福神ですが、実はそれぞれ別々の宗教の神様って知っていましたか?

  • 大黒天: ヒンドゥー教の神シヴァの異名「マハーカーラ」の漢訳。
  • 恵比寿: 唯一日本由来の神。伊邪那岐命と伊邪那美命の子供「蛭子命」を祀る神。
  • 毘沙門天: ヒンドゥー教の財宝の守護神「クベーラ」が元。
  • 弁才天: ヒンドゥー教の女神「サラスヴァティー」が元。
  • 布袋尊: 唐の明州に実在したと言われる仏僧。
  • 福禄寿: 中国道教の三徳を具現化した神(幸福、封禄、長寿)。
  • 寿老人: 道教の神「南極老人」の化身。

まるで神様の福袋のようですね。

日本人は色んな宗教に寛容だとは言っても、初詣やクリスマス、お盆などは、宗教に紐づけている人はほとんどいないと思います。どちらかと言えば、これらの行事はお祭りやイベントのように扱われていますよね。

冒頭でも述べましたが、日本では多くの人が「無宗教です」と答えることが一般的です。でも、神社やお寺では礼拝が行われ、お守りも信じられ、お墓参りも行われます。日本人が「無宗教」と言うのは、特定の宗教を信仰していないということであり、八百万の神々や見えない世界を無意識の中で信じている人も多いと思います

どんな時でも「悪いことをすると誰か(神様)が見ているかもしれない」と思うから止まることができる。日本人は宗教を必要としないほど、神様の存在が実は身近にあって、それが道徳に繋がっていると思います。

「最後の神頼み」という言葉があるように、困った時はつい、「神様、仏様、ご先祖さま、助けてください」と心で唱えてしまいますし多くの日本人にとって、神様は信仰の対象というより、自分をかえりみるきっかけなんですね。だから「神様が見ている」や「バチが当たらないように…。」というような考え方を自然とするんです。

今回のようなお話をすると、宗教って大切かもなって思ってくれる人もいるかもしれませんね。

でも、皆さんご承知のとおり、日本では宗教のイメージがすごく悪いんです。

次回は宗教のネガティブな印象について触れたいと思います。

(つづく…)

次回→「宗教は詐欺の王様?」

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