第1章 これからの宗教の話をしよう③│木村未明の「かしもの・かりもの勉強中」

こんにちは木村未明です

前回、我々日本人がクリスマスのようなキリスト教のお祭り、除夜の鐘のような仏教の伝統、そして初詣のような神道の慣習といった、異なる宗教要素に寛容な国である理由を考察し、一方で、なぜか宗教にネガティブな印象が強いという問いを残して終えました。

今回は日本人が宗教にネガティブな印象を持つ理由について考えてみたいと思います。

この記事を書いた人
木村 未明
天理教深川大教会

きむら みめい…勤務地、葛飾区。職業、宗教家。
1991年生まれの宗教6世。宗教の世界に身を置き、日々信仰しながら感じる喜怒哀楽の数々を書き綴る本連載。コンセプトは「しなければならない信仰から、したくなる信仰へ」
@kimura_mimei

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宗教は詐欺の王様?!

世界には「〇〇の王様」と呼ばれるものがたくさんあります。ライオンは動物の王様、ドリアンはフルーツの王様として知られています。一方で「詐欺の王様」は何かと問われた場合に、「宗教」と答える人もいても、その回答に疑問を抱かないほどに世の中では宗教のネガティブな印象が広まっています。

宗教は「危険」「怖い」といったイメージは、信仰者である私ですら否定できないほどです。

以前、有名な方の音声メディアで、「オンラインコミュニティを立ち上げたときに、「〝宗教だ!詐欺だ!〟と非難を浴びた」と話されていました。非難の言葉を選ぶときに、「詐欺だ」は理解できますが、詐欺と同列の言葉として「宗教」が扱われることに興味を持ちました。「宗教=怪しいもの」という共通の価値観が世の中にあるということです。

なぜ、宗教にはネガティブなイメージがあるのか?と疑いたいところですが、火のないところには煙は立ちません。

宗教にネガティブな印象を持つ理由は多岐にわたります。

例えば、宗教間の争いや戦争、信者以外が参加しにくい閉鎖的な雰囲気、信者だけが救われるという排他的な思考、高額な商品や献金の要求、非科学的な世界観などが挙げられます。これに加えて、一部の「カルト宗教」が詐欺的な手法を用いて信者や財産を搾取していることが、宗教全体に否定的な印象を抱かせています。特に「オウム真理教」の地下鉄サリン事件は、宗教に対するネガティブなイメージを一層悪化させる出来事でした。大体こんなところでしょうか。

ただし、すべての宗教が詐欺まがいの活動を行っているわけではありません。多くの信者は平穏な生活を送っているというのもまた事実です。ですが、カルト宗教=社会問題というような認識が、社会の中に根付いているのは間違いないと思います。

ところで、〝カルト宗教〟ってなに?

カルトって何?

「カルト宗教」。マスメディアや日常会話でたびたび耳にすることがありますよね。漠然としたイメージで、なにかカリスマ的な教祖がいて、その教えに対して盲目的に従っている人たちの集団というイメージでしょうか。

結論から言ってしまうと、実は「カルト」という言葉の定義はかなり曖昧で、その意味合いは多様です。そのため、一般的に認識しにくい言葉とされています。

カルトの元々の意味は「崇拝」や「礼拝」を指す言葉でした。

少し違う意味が見出され始めたのが20世紀初頭、キリスト教の神学研究において、新たに誕生した宗教団体を区別するために「カルト」という用語が使われるようになりました。最初はネガティブな意味合いは少なく、新しい宗教団体が成長して一般に認知されると、より安定した宗教団体へと変わると考えられていました。つまり、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教といった伝統宗教とは異なる、新たに誕生した宗教を「カルト」と呼んでいたんです。

ところが、カルトと呼ばれる新興宗教の中には社会的問題を引き起こすものが現れ、一部の宗教団体では教祖への絶対的な服従、マインドコントロール、経済的、精神的、身体的な搾取などが行われ、被害者が後を絶たない状況が生まれました。こうした問題に取り組む救済団体や脱会支援団体は、問題の宗教団体を「カルト」と表現し、その宗教団体と闘ってきました。

「でも、安心してください。私たち(天理教)は、ホワイト宗教だから大丈夫!!」

と、言いたいところですが、残念ながら、どの宗教も一歩間違えると「カルト宗教」となりえるのです。

宗教は歴史的に多くの人々に希望をもたらし、一方で多くの人々に害をもたらすこともありました。そのため、宗教との付き合い方が非常に重要なのです。信仰者も非信者も、宗教について正しい知識と理解を持つことが大切です。属に言う宗教リテラシーというやつですね。

ここで言いたいことは、信仰をしていない人には、宗教=危険という価値観だけにとどまってほしくないし、信仰者側も「この教えだけが正しい」という盲目的な信念を持たないよう、慎重に考えることが大切であるということです。

(つづく)

次回→「何事も付き合い方が大切」

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